慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(chronic kidney disease-mineral and bone disorder;CKD-MBD)の主要な一病態とされる二次性副甲状腺機能亢進症(secondary hyperparathyroidism;SHPT)は、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)分泌亢進と副甲状腺細胞増殖を主徴とし、その発症主因は活性型ビタミンD3の産生低下にあるとされている。活性型ビタミンD3産生低下は、小腸におけるカルシウム吸収の低下、PTHの作用不応性をきたし、低カルシウム血症を生じる原因となる。低カルシウムによって二次性に副甲状腺機能が亢進し持続した状態が二次性副甲状腺機能亢進症である。
活性型ビタミンD3は、腸管への作用によってカルシウムの吸収を促進するとともに、副甲状腺に直接作用し、PTHの合成・分泌を抑制する。また、透析技術の進歩によって透析期間が長期化する傾向があり、低カルシウム血症を呈さないにもかかわらずPTHが異常高値を示す進展したSHPTが問題となるケースが増えている。それにともない、経口の活性型ビタミンD3製剤では、高カルシウム血症の発現により充分な投与が行えないケースも増加した。
その後、1984年にSlatopolskyらによって、活性型ビタミンD3を週3回静脈内投与し、一時的に血中ビタミンDを超生理的濃度にまで高めることで、高カルシウム血症を生じることなくPTH分泌が抑制されることが報告された。
その中で、中外製薬株式会社は、血清カルシウム上昇作用が弱くかつPTH抑制作用が強い薬剤の創薬を目指し、様々なビタミンD誘導体を合成して検討を重ね、オキサロール注(一般名Maxacalcitol:マキサカルシトール)を見出した。
オキサロール注は、直接的なPTH合成・分泌抑制作用、線維性骨炎及び骨代謝異常の改善作用の機序により、血清PTH低下効果、高回転を示す骨組織及び骨マーカーの改善効果について審査され、維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症治療薬として承認され、2000年9月に発売されるに至った。
6年間の再審査期間を経て2006年9月に再審査申請を行い、2008年12月には「薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当しない」との再審査結果が通知された。
2024年10月1日、LTLファーマ株式会社はオキサロール注の製造販売承認を承継した。
